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お知らせ

法人所有の土地を役員に居住用宅地として使用させた場合

はじめに

法人所有の土地を役員に貸して、役員がその土地の上に自宅を建てて居住したとします。

この場合に注意しておくべき借地権、役員への経済的利益の問題について考えてみたいと思います。

税務上の取り扱い

権利金の認定課税

法人が、借地権の設定により他人に土地を使用させる場合、通常、権利金を収受する慣行があるにもかかわらず権利金を収受しないときには、原則として、権利金の認定課税が行われます。

ただし、権利金の収受に代えて相当の地代を収受しているときは、権利金の認定課税は行われません。この場合の相当の地代の額は、原則として、その土地の更地価額のおおむね年6%程度の金額です。

 

No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂

 

土地の更地価額とは、その土地の時価をいいますが、課税上弊害がない限り次の金額によることも認められます。

 

  1. その土地の近くにある類似した土地の公示価格などから合理的に計算した価額
  2. その土地の相続税評価額又はその評価額の過去3年間の平均額

 

従って、法人が役員に自社所有の土地が権利金を収受する慣行がある地域にある場合は、当該役員から相当の地代を収受すれば権利金の認定課税は行われません。

源泉所得税の取り扱い

法人が、資産の貸与を無償又は低い対価で受けた場合における通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の差額を、原則としてその役員に対する給与として取り扱うこととしています。

 

では、いくら支払を受ければいいのか?

 

源泉所得税の取扱い(所基通36-40)では、法人がその役員の居住用として土地を使用させた場合には、その賃貸料年額としてその土地の固定資産税の課税標準額の6%相当額を徴収している場合には、その役員に対する経済的利益の認定は行わないこととされています。

 

 

検討事項

権利金の認定課税の話で出てきた相当の地代は、更地価額のおおむね年6%程度でしたが、源泉所得税の取り扱いで経済的利益が認定されないの固定資産税の課税標準額の6%相当額という文言が出てきました。

 

Q:固定資産税の課税標準額の6%相当額を収受していれば、権利金の認定課税は行われないか?

A:法律の立て付け上は、認定課税されると考えます※。

※実務上は、実際に認定課税されるケースは少ないと聞きますが…

 

源泉所得税の取扱いにおいて定められている「通常支払わられるべき賃貸料の額」、つまり固定資産税の課税標準額の6%程度というのは、その貸与している居住用の土地が権利金の授受の慣行がある土地である場合には、その使用について通常収受すべき権利金を収受したものとした場合の賃貸料相当額が定められています。
従って、権利金の授受の慣行のある土地について権利金を収受しないで使用させている場合には、たとえそれが役員の居住用に供されるものであっても、その権利金の授受に代えてその土地の更地価額の6%程度の相当の地代を徴収すべきであり、この相当の地代を徴収しないで、単に固定資産税の課税標準額の6%相当額程度の賃貸料だけを徴収している場合には、通常収受すべき借地権利金相当額は、その役員に対する給与として取り扱われることになります。

参考記事

同族会社の借地権20%評価、贈与の場合の裁決事例について

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この記事は令和2年9月現在の法令等に基づき作成されています。

髙木誠