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同族会社の借地権20%評価、贈与の場合の裁決事例について

はじめに

被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し相当の地代を収受して土地を貸し付けている場合は、60年通達の6、43年通達を適用して、被相続人が所有する同族会社の株式の評価上、当該土地の自用地としての価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を同社の純資産価額に算入する旨定めています。これが、贈与の場合で争われている裁決がいくつかあります。この場合の審判所の判断について考えていきたいと思います。

 

※参考:平成27-03-25公表判決(TAINSコードJ98-3-05)

 

60年通達の6

 

43年通達

 

この20%を株式の評価上加算する理由ですが、以下、審判所の判断です👇

当該賃貸に係る土地の価額から20%の借地権相当額が控除されるだけであるとするならば、同族関係者は当該会社に対して支配するという関係を有することを考慮すると、相当の地代を収受して同族会社に土地を賃貸する方法を採る場合と権利金及び通常の地代を収受して同族会社に土地を賃貸する場合とで、課税の取扱い上不公平を生ぜしめることになる。

そこで、地主と借地人が上記のような関係にある場合には、20%の借地権相当額を同族会社の純資産価額に算入することで、貸付けに係る土地の評価額を株式の評価額を通じて100%顕現(地主の株式の所有割合などにより必ずしも100%顕現できるわけではないが)させることが課税の公平上適当と考えられるからであり、当審判所においても、これらの取扱いは、借地権相当額を同族会社の純資産価額に算入すべき場合を必要十分に示しているとはいえないものの、上記の場合の定めとしては合理的なものであると解する。

争点

請求人(納税者)は、60年通達の6の注書は被相続人でない者(この場合は贈与者)が同族関係者となっている同族会社に対し、土地を貸し付けている場合においては、43年通達の適用はない旨を主張しました。

つまり、上記通達は相続の場合だけで、贈与の場合は適用がないという主張です。

 

しかし、審判所のこの主張を退けました。理由は以下のとおりです。

土地を所有する者が、家族で経営する会社を設立し、所有する土地にその会社に対する借地権を設定して建物を建て、その建物を利用して家族経営に係る事業をするにつき、会社を介在させることで、土地所有者自身がその土地上に自己所有建物を建てて事業を行う場合に比して、その代替わりの際に課税されるべき相続税が回避されることを防止することにあると解される。

ところで、生前贈与に対して課税することで生前贈与によって相続税の負担が回避されることを防止しようという贈与税の意義からすると、上記の代替わりの際に課税されるべき相続税の回避の防止は、生前贈与を通じて同様の結果が生じてしまうことをも防止しなければ、徹底しないことになり、そうなるとひいては贈与税の存在意義を没却ないし減殺することになりかねない。

確かに、60年通達の6の注書は、その文言のみからすれば、相続税の課税上の取扱いを定めたものとなっているが、同通達の表題や趣旨の記載から贈与税の取扱いをも定めたものであることは明らかであり、同通達の6の注書に関しても、上記の代替わりの際に課税されるべき相続税の回避の防止の趣旨に合致する限りは、生前贈与の場合にも及ぼすべきであると考えられる。

そうすると、本件のように、同族会社に土地を貸し付けている当該同族会社の同族関係者が、当該同族会社の株式のみを贈与した場合において、60年通達の6の注書の適用がないとするならば、先に株式の贈与が行われ、その後、当該土地について贈与を行うか又は当該同族関係者に相続が開始した場合、先に行われた株式の贈与の際には、借地権相当額(土地の自用地としての価額の20%)を含めずに当該同族会社の純資産価額を算定し、その後の土地の贈与又は相続の際には、借地権相当額を控除して当該土地の評価額を算定することとなり、結果的に当該借地権相当額が相続税ないし贈与税の対象から除外されることになって、代替わりの際に課税されるべき相続税の回避が生じることになってしまうから、これを防止すべきであると考えられる。

そこで、より一般的にいうなら、同族会社の株式を贈与する同族関係者からみて、相当程度年下の第1順位の推定相続人(将来当該贈与者に相続が開始した場合に相続人となる蓋然性が高い者をいう趣旨であり、実子であれば該当するのが原則)が受贈者である場合には、当該会社に借地権が設定されている土地の所有者との関係次第で、60年通達の6の注書の取扱いにより借地権相当額を当該会社の純資産価額に算入すべき場合があるということになる。

 

当然といえば当然ですが、贈与税は相続税の補完税なので、贈与の場合だけこれを適用しないのは通達の主旨に沿わないという解釈ですね。

 

ちょっとマニアックな論点でしたが、僕も過去に実務で悩んだことがあるので解説してみました。参考になれば幸いです。

 

 

借地権は税務上様々な諸問題がありますが、法人所有土地に役員が居宅を建てた場合の注意点についても以前記事にしていますので、よければそちらもご参考にされて下さい。

法人所有の土地を役員に居住用宅地として使用させた場合

 


この記事は令和2年11月現在の法令等に基づき作成されています。

高木誠