消費税の減税で得をするのは誰なのか?
消費税の減税について思う
次の税制改正は論点盛りだくさんなのですが、消費税は減税。来年4月から飲食料品は1%に改正予定です。耳障りはいいですが現場の税理士からは非難の声が多い。インボイス導入のときもでしたが、政策の実現のために様々な特例を創設したり、年々複雑になって、その負担は現場の企業や税理士に押し付けるのが続いているからでしょう。
一方、消費者は本当にお得なのか?それも微妙です。飲食料品販売事業者が「税込価格を据え置く」という判断をすれば支払う金額は変わりません。つまり今108円のものを来年4月に101円に改定する訳ではなく、108円のまま据え置きすることになります(本体価格と消費税の内訳が変わるだけ)。値下げしないと叩かれるので堂々と表明はしないと思いますが、現実的に据え置きにする事業者も多いと思う。そうなると消費者の恩恵は大して期待出来ない。また、この改正で「外食産業」はマイナスの影響が懸念されています。結果誰が得をするのだろう?税込価格を据え置く飲食料品販売者だけになってしまわないでしょうか。物価高騰対策の本質からズレてる。完全に時の政権の都合のための改正で、消費税法始まって以来、過去最大の愚策になるかもしれません。まだ決定ではないですが(ほぼ決定だろうけど)出来ればやめてほしいですね。
創設予定の特例
とはいえ、決まれば現場は動くしかありません。税率が1%になるのは、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間です。この時限措置に合わせて、令和8年9月15日閣議決定の大綱で、いくつかの特例が設けられる予定です。国税庁のパンフレットから、事業者に関係しそうなものを整理しておきます(法案は未成立なので、以下は予定の内容です)。
免税事業者が課税事業者になるための届出の特例
飲食料品を売っていて、仕入が10%、売上が1%になる事業者は、本則課税で申告すれば消費税の還付を受けられる可能性があります。免税事業者が還付を受けるには、本来、その課税期間が始まる前に課税事業者選択届出書を出す必要があります。
今回は、令和9年4月1日の属する課税期間中に届出書を出せば、その課税期間の初日から課税事業者になれる特例が設けられます。個人事業者なら、令和9年12月31日までに出せば、令和9年1月1日から課税事業者になれます。その場合、1月1日から3月31日までの飲食料品の販売には8%(軽)を、4月1日からは1%を適用して申告します。
注意点は、課税事業者を選択すると原則2年間は課税事業者のままなことです。令和11年から免税に戻すなら、令和10年中に選択不適用届出書を出す必要があります。届出書の参考事項欄には「飲食料品特例」と書きます。
簡易課税から本則課税に切り替えるための届出の特例
簡易課税のままだと、みなし仕入率で計算するため、本則で計算すれば還付になる場合でも還付は受けられません。還付を受けるには、本来は課税期間が始まる前に、簡易課税制度選択不適用届出書を出す必要があります。
今回は、令和9年4月1日の属する課税期間中に出せば、その課税期間から本則課税で申告できます。簡易課税の2年縛りも、この課税期間については適用されません。こちらも、届出書の参考事項欄に「飲食料品特例」と書きます。
簡易課税の計算方法の特例
簡易課税を続ける場合は、業種区分にかかわらず、1%対象の飲食料品の売上税額と同額を仕入税額として計上します。その他の売上税額には、従来どおりみなし仕入率を使います。2割特例・3割特例を使う場合も同じです。
パンフレットの計算例では、飲食料品の小売(売上2,000万円)、雑貨の小売(300万円)、イートイン(100万円)を営む場合、売上税額が60万円、飲食料品の仕入税額が20万円、みなし仕入率による仕入税額が30万円で、納付税額は10万円です。飲食料品の部分は、売上税額と仕入税額が同額なので納税がゼロです。75%ルールの判定は、1%対象の取引を除いて行います。
中間申告の特例
飲食料品の小売店は売上税額が減るため、中間納付税額が過大になります。飲食店は、仕入が1%で売上が10%なので、税率引下げの終了後に仕入税額が増え、同じく中間納付税額が過大になります。
そこで、令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間から、直前課税期間の飲食料品の売上・仕入に1%を適用して再計算した税額による、仮決算の中間申告書を出せる特例ができます。終了時(令和11年4月1日以後開始の中間申告対象期間)は、8%で再計算した税額によります。
結局、現場が一番忙しい
こうして並べてみると、特例の届出や計算方法や実務対応を迫られるのは、税理士や企業側です。インボイスのときと同じで、政策の負担は現場に来ます。
税金は毎年改正があって常に政争の具に使われます。消費税以外でもこういう問題は随所にあって、個人的には気が狂ってるなと思ってます。
※この記事は、国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)に基づいています。法案が成立するまでは内容が変わる可能性があります(令和8年10月現在)。