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役員報酬の未払計上(翌月払い)は損金(費用)にできるのか?

はじめに

例えば毎月末締め、翌月払い(15日)に給与を支給している3月決算の会社があったとします。

3月分の役員報酬は4月15日に支給ですが、この場合「損金(費用)に計上できない」、「調査で否認された例がある」といった記事を見かけます。

本当にそうなのでしょうか。ちょっと検討してみたいと思います。

役員報酬の損金計上の根拠

条文で役員報酬が損金算入されるための根拠見てみます。

法人税法第22条3項

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

  • 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額〔法基通2-2-1〕
  • 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
  • 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 

定期同額給与

役員報酬については、別段の定めが設けられていますので、別段の定めである第34条を確認します。

 

法人税法第34条第1項第1号

内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第3項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

  • 一 その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)

 

赤字の部分ですが、「定期同額給与に該当しない場合は損金の額に算入しない=定期同額給与であれば損金算入する」ということになります。

 

詳しい説明は国税庁のHPに委ねますが、一定期間において毎月概ね同額の給与です。役員に関しては、毎月の報酬額を調整し、利益を圧縮することで納税額を恣意的に抑えることができないよう、この規定があります。

 

定期同額給与 | 国税庁

 

補足

法人税法第34条第2項、3項にも「~~は損金算入しない」という規定がありますが、ここでは省略します。

個人的な見解

ここまで見てきた中で、役員報酬の未払計上について損金に算入しないといった部分は見当たりません。

 

一応、TAINS(判例などのデータベース)で検索して見ましたが、上記の締日が月末で翌月払いの役員報酬についての損金性について争われている例は見つけることができませんでした。

 

税務調査で否認された例があると書かれた記事がありますが、逆にどういう根拠で否認したか伺ってみたいところではあります。

 

また、役員と会社とは委任契約だから支払った時でないと損金算入はできないという主張も見られました。

 

改正民法648条2項には

受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。

 

と規定されています。締日を月末としている以上、債務は確定しているのではないかなと私は思います。

 

役員報酬の支払いが何カ月も滞って、未払金が積みあがっている場合は別途検討が必要かと思いますが、上記のように他の従業員と同様月末締め翌月払いの給与支給を行っている会社では、定期同額給与に該当すれば役員報酬も損金算入して問題ないかと思います。税理士によって異なる見解を示されている方もいますので、顧問税理士と相談して方針を決められて下さい。

 

記事紹介

法人所有の土地を役員に居住用宅地として使用させた場合

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この記事は2020年6月現在の法令等に基づき作成しています。

高木誠