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お知らせ

暗号資産(仮想通貨)を法人に売却する際の税金や注意点について

はじめに

2017年から2018年にかけて暗号資産(当時は仮想通貨)が高騰し、法人で運用したいという相談がそれなりにありました。

中には実際に実行された方もいますが、暗号資産のレートが当時に比べると安いので、今後値上がりすると見込まれる方は、あらためて法人に移しておくのも一つの案でしょう。

 

しかし、私はわざわざ法人を作ってそこまでする必要があるのかは疑問です。必ず値上がりするなら分かりますが、不確実な要素があるならギャンブルになりますので、守りを固めて経営することを推奨する私としては反対です。追加コストや手間もかかります(登記費用、法人住民税均等割、毎年の申告、税理士費用など)。従って、実行するなら、会社を元々持っている方や、別事業で会社を始める予定の方などにお勧めしたい内容です。

 

以前、MAStandさんというWEBサイトに私の暗号資産の申告に関するインタビュー記事をご掲載頂いたので、よければそちらもご参考にされて下さい。

 

高木誠税理士に暗号資産(仮想通貨)の確定申告について聞いてみました

法人に売却する際の注意点

低額譲渡(時価より低い金額で売ること)の際に注意が必要です。

仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)を例に見てみましょう。

 

 

【例題:暗号資産を低額譲渡した場合の取扱い 】

  • 4月9日に 450,000 円で1BTC を購入。
  • 5月 20 日に 450,000 円で1BTC を売却。

 

なお、売却時における交換レートは1BTC=1,200,000 円。
(注) 上記取引において暗号資産の売買手数料については勘案しません。

 

個人の所得計算

暗号資産の利益計算は、下記のように計算します。

譲渡価額-譲渡原価ーその他の必要経費(手数料など)

 

上記の例題の場合、450,000円-450,000円=0円となり、個人の利益はないのですが、これは所得税法上の低額譲渡(所得税法40条)にあたるため、税金の計算上は一定の調整が必要です。

条文を読み解くと、時価の70%未満の譲渡は低額譲渡にあたるのですが、例題の場合、時価の70%と「実際の譲渡価額」との差額を「実際の譲渡価額」に加算します。

 

従って、1,200,000円×70%-450,000(差額)=390,000円(これを加算する)

つまり、所得税法上の利益計算は450,000円+390,000円-450,000円(譲渡原価)=390,000円となり、これが個人の所得(事業所得or雑所得)になります。

実際には、購入価額も売却価額も450,000円で利益はないですが、所得税法上の利益(所得)は390,000円となり、これに税金が課せられます。

 

法人の所得計算

一方、法人側では、暗号資産の仕入れになりますが、時価と実際に取得した価額の差額は個人から法人への実質的な贈与となりますので、法人側では、受増益を認識します。

 

840,000円※-450,000円=390,000円(受増益)

この390,000円が法人の所得になります。

 

※この840,000円は所得税法の1,200,000円×70%の規定ですので、法人側の法人税法でこれを採用していいのかという議論があるかと思います。従って1,200,000円で認識すべきという税理士の先生もいらっしゃるかもしれません。実際に申告を依頼する税理士の先生に判断を伺ってみてください。

結論

上記のように個人の暗号資産を法人に売却する際は、この低額譲渡の規定に注意が必要です。

これを頭にいれつつ、個人法人のお財布事情や取得費、今後の見通しなどを勘案したうえで、実行されるといいかと思います。

補足

個人で暗号資産を持ったまま相続が発生した場合、亡くなった被相続人が暗号資産を保有していたことを相続人が知らない、気づかない場合があります。法人が保有する場合は、法人の帳簿に載るため、漏れることはないでしょう。相続人や税理士としてはこういった観点でも安心ですね。

なお、現在当事務所では、新規の暗号資産の申告業務を行っていません。

参考

仮想通貨のステーキングと税金の計算について


この記事は2020年9月現在の法令に基づき作成されています。

高木誠