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税理士になるには試験組?大学院免除組?どちらがお勧め?

大学院免除は免罪符のようなもの

税理士試験は5科目取得する必要があり、それなりに時間も労力も費やします。2、3年くらいで受かる頭のいい方もいますが、それはレアケースで平均すると8年くらいかかっているのではないでしょうか。いや、もっとかもしれません。それくらいの時間を費やして取得する価値があるのかは別として、お金はかかりますが大学院免除の制度を利用すれば、会計科目を2つ(簿記論、財務諸表論)と税法(何でもいい)を1つクリアすれば税理士試験はパスできます。

 

はじめに断っておくと、私個人は大学院免除制度は反対ではありません。受験生当時、大学院免除制度を「免罪符のようなものだな」と思っていました。免罪符は14世紀に出てきたもので、お金を支払って教会が発行する贖宥状を買えば天国に行けるというもの。教義は軽視されていました。教会側から見たら金集めとポピュリズムのためのもので、そうでもしなければ当時の教会はもたなかったでしょう。その後、キリスト教の堕落からルターやカルヴァンのような人が出てきます。特にカルヴァンの予定説はプロティスタンティズムの※エートスを育て、近代の資本主義は生まれました。

 

今や大学院免除組がマジョリティで、試験組の方が少なくなった税理士試験。もちろん大学院を軽視している訳ではないですが、本来大学院というのはアカデミックな訓練を受ける場所。原則があった上での免除という制度ですので、やはり大学院免除の方が明らかに特例です。しかし特例がマジョリティとなったこの試験はこのままでいいのでしょうか。この流れは今後も加速するはずなので、少しいびつな資格になってきたなと感じます。免罪符と同じ歴史を辿るなら、「聖書に戻れ」と言ったカルヴァン達の宗教改革に習って税理士試験を改革をしなければならないでしょう。膨大な量の暗記が必要な試験が今の時代に見合っているかは議論が必要なのかもしれません。実務での問題発見能力、解決能力、法律家としての素養を育てる制度であってほしいなと思います。

 

※エートス…エートスの説明は難しい。エートスはエートスでそういうものとしか言えないが、一般的には行動様式、行動規範。人の行動や思考のもとを生み出しているものと解釈される。

私の体験談(税理士試験)

私自身の体験です。4年間で税理士試験をパスしました。

 

  • 1年目…簿記論〇、財務諸表論〇、法人税×
  • 2年目…所得税〇、法人税×、相続税×
  • 3年目…法人税×、相続税×、消費税×
  • 4年目…法人税〇、相続税〇、消費税〇

 

一般的に見れば早い方なのかもしれませんが、3年以内に受かるつもりでしたのでミッションとしては失敗です。嫌味に感じるかもしれませんが、上には上がゴロゴロいますので気にしないで下さい。3年目に全部落ちた時はそれなりに絶望しました。特に3,4年目はフルで働きながらでしたので本当にもう心が折れました。多くの時間を費やせる環境にあり、効率的に勉強の計画が出来て、ゴールを達成する実行力があれば受かる試験ではあります。

専門学校の落とし穴

税理士試験の専門学校には落とし穴があります。落とし穴に落ちると何年通っても試験に受からない負のスパイラルに陥ります。予備校には「ぬし」と呼ばれる方がいて、「もう何年もいる」とか周りの受験生の噂になっています。

 

人間は慣れるとそこが自分の居場所のようになっていきます。オルテガ(1883‐1955スペインの哲学者)の言う「私とは、私とその環境である」のように、受からない自分が本当の自分になってしまい、受からない環境に馴染んでしまっています。こうなっては目的は達成できません。

 

また、自習の合間の休憩時間にお友達とおしゃべりを始めてなかなか席に戻らない人をよく見かけました。また、当時は喫煙所にいくと若い受験生が居座って長々と喋っていました。「ガストに行け」と言いたいですが、気持ちは分かります。

 

終わりの見えない試験は辛く、長い勉強期間で自分を律するのは強い覚悟と意思が必要です。自分の甘えに勝てないと合格はできないでしょう。口より手を動かす。仕事でも常に大事なことです。

税理士試験の失敗

大学院免除へ切り替えは株の損切りだ

私は多くの先生の言うように、試験組は早目に大学院免除に切り替えることも大切かと思います。1年にたった1回の試験。落ちた時のダメージは大きいです。切り替えるタイミングは難しいですが、何年~何年で取るという目標を決めて達成できそうにないなら早目に切り替えていいかと思います。

 

なんとなく株の損切りと似ています。株でなかなか上手くいかない人は損切りができない人です。ついついナンピン(下がってまた買い増しすること)してしまいます。働きながら、子育てしながらの方は尚更考えた方がいいです。最優先すべきは、やはり早く受かることもさながら、自分にとって幸せな道を選ぶことでしょう。知識の厚みは受かってからでも身につけられますし、受かってから何をするかの方が大事だと思います。

試験組と大学院免除組の優劣について

試験組の中には試験組と大学院免除組の優劣をつけたがる方もいます。気持ちは分かりますが、もはや税理士においてマジョリティなのは大学院免除組ですので、どっちが優れているかのモノサシ・尺度は、価値基準としてもはや古くなって、これからはあまり意味がない気がします。

 

試験組か大学院免除組かのモノサシより重要なことが実務においては必ずあります。それが何なのかは税理士となった自分の足で見つけるべきでしょう。人それぞれです。私は試験組マンセーの予備校に通っていたので、当時は試験組の方が価値がある、実務に行ったら俺の方が重宝されると思っていた節があります。そういった思いが自分の中にあったのは確かですが、時間が経った今はそんなものはどうでもいいので平成の時代に置いてきました。

初めて出会った大学院免除組の同僚

私が最初に勤めた東京の税理士事務所で同い年の大学院免除組の税理士がいました。今でもよく連絡をとっています。彼は私よりさっさと登録、独立してしまい、今は資産家相手に独自の仕事をしています。

 

どこでそんな人脈をとってきたの?と聞きたくなる、とにかくポジション取りがうまい方です。この能力は試験組とか大学院免除組といった出自は関係ありませんし、食っていくにはポジション取りの能力の方が税法の知識より大切かもしれません(ポジション取りが上手ければそれでいいのかというと、全然違うと思いますが…)。そういえば、受験生と話すと試験組より大学院免除組の人の方がキラキラしているのは、気のせいではないかもしれません。

 

最近、3科目とって院免でコスパ最高。みたいに考える方も多いようですが、これはこれでしょうもないなと思ってしまいます。早いことだけに価値があるとも思いませんし、職業をコスパで考えてるのはなんとなく寂しく思います。

税理士のブランド

試験組、大学院組に関わらず、税理士という資格を得て威張っていたり、態度が大きい人をよく見かけますが、恥ずかしくないのかな?と思います。今でもそれなりのブランドがある国家資格ではありますが、社会に出て仕事をする上で税理士の垣根は簡単に飛び越えられるし、垣根があってないようなものだと、私は感じています。これからの時代なら尚更です。アメリカでは、一つの職能を極めた人は専門家。専門家はあくまで専門家でセカンドランク(2流)です。色々な学問の垣根を自由に行き来できて、全てに対して最善の判断ができる教養がある人こそ本当のエリートでしょう。税理士ごときで威張っている、または大学院免除組との優劣を気にしているなんて、とてもレベルの低い話です。

自分の幸せは自分で決める

私の場合、税理士という資格の前に色んな税法を学びたい方が先決で、お金もなかったので選択肢は5科目受かる事の一択でした。結果的に6科目取って本当によかったと思います。
皆、自分のした選択が最善で、それでいいんです。試験組のことは試験組しか分からない。免除組のことは免除組しか分からない。

試験組が優越感に浸りたがるのも腹が立ちますが、免除組がコンプレックスをさらけ出してくるのも私は疑問です。
税理士になった瞬間、税理士になった手法(試験か免除か)は過去になって、過去はただただ遠ざかるばかり。
税理士になった後の未来の方が100倍大事です。

自分が幸せになれる道を進む。そして、やると決めたら必ずやり遂げる。あまり言い訳しない。あまり弱音吐かない。ちょっとはいいです。だってどちらも大変でしょうから。

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高木誠