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熊本の税理士事務所に転職した話と事務所選びのポイント

はじめに

僕は2017年まで東京の税理士事務所に勤めていたのですが、結婚を機に熊本に戻ることになりました。当時の転職活動や、事務所選びのポイントについて詳しく書いてみたいと思います。これから熊本の税理士事務所に就職、転職をお考えの方の参考になれば幸いです。

面接までの流れ

僕は初めて税理士事務所に就職した際、一度苦い経験をしています(下記記事参照)。

この業界、ブラックも多いのでこれから就職される方は良ければそちらも参考にされて下さい。というか、気を付けて下さい(笑)。

 

ブラックが多い会計事務所会計事務所で就職する際の注意点について

 

このような経験もあって、転職には慎重になっていましたので、帰熊のタイミングで数社面接させてもらいたいと思っていました。

東京→熊本への転職なので、面接に行くにも場所的、時間的制約がありましたが、以下のように進めていきました。

人脈を活用して応募

熊本市内に住む予定だったのですが、元々天草にしか住んだことがないので、市内は土地勘も人脈もほぼありませんでした。唯一、東京の専門学校で同期だった友人が、熊本の税理士事務所(仮にA社とします)に勤めていましたので、話を聞いてみて、その職場の雰囲気が良さそうだったため、その友人経由でコンタクトを取ってスムーズに面接のお約束をさせていただきました。

indeedを見て応募

上記以外は、indeedで求人情報を吟味して選びました。

 

熊本地震直後でもあったため、求人を出している税理士事務所が今より少なかったように思います。また、当時から税理士登録をしていたのですが、税理士よりも税理士補助者を募集している事務所の方が多かったため(これは今でも同じです)、候補先は更に絞られました。

給与面(年収水準)

当時から税理士登録はしていたのですが、求人で見る限り、2017年当時の基本給の相場が23~30万円、賞与を含めて年収で350~400万円くらいのレンジだった記憶があります。さすがに東京よりは大幅に低いです。今はもう少し上がっていると思いますが…

以前、勤務税理士時代の年収についての記事も作成したので、良ければそちらもご参照下さい。

 

勤務税理士時代(所属税理士、社員税理士)の年収を公開

 

税理士でこの給与水準なので、非税理士の方は更に低いです。

ちなみに、熊本の税理士事務所は一人当たりの売上高が全国平均に比べてもの凄く低いです。不思議なのですが、他の九州の県と比較しても低かったと思いますので、必然とそれが給与水準にも反映されています。これからの若い人のために、給与面でも夢のある業界にしていかなければなりませんね。

 

話が逸れましたが、indeedで給与体系や、HPから会社や所長の雰囲気を拝見し、結果的に2社応募させて頂きました。

書類審査

上記の2社に履歴書を送らせてもらったのですが、1社はその段階で落とされてしまいました。

落とされてしまった理由は、求人に載っていた雇用条件について僕が色々交渉をさせてもらったので、それが折り合わなかったのだと思います。私側の問題でもあるので仕方ないですね。

 

もう1社(仮にB社とします)は、電話から履歴書の送付、面談までの日程決めまで、窓口になってくれた方がとてもスムーズに対応してくれたため、かなり印象が良かったです。この時点で大分気持ちが傾いていました。

本当は3社面接させていただけたら良かったのですが、ここの印象がすごく良かったので、もう2社だけ面接させてもらえれば十分かなという気持ちになっていました。

面接

このような経緯で結果的に2社面接させて頂きましたが、B社から「是非とも来て欲しい」という言葉を頂き内定をもらえました。

 

A社は、僕からお願いして面接してもらったという経緯だったのもあり、喫緊で人が欲しいわけではないが、もしよければどうぞというスタンスでした。無理やり雇っていただいてご迷惑お掛けするのも気が引けたため、結果的にB社に転職させて頂くことになりました。

 

自分が行きたいと思っていた事務所ですので、とりあえずホッとしました。

このような経緯でB社に転職し、結果的に独立するまで3年勤めさせていただきました。

参考:現在の給与水準

2020年(秋)現在、改めて熊本の税理士事務所の給与水準を確認してみました。

ざっと見た感じ、月収ベースでは下記のような感じでした。

 

月収下限 月収上限
税理士補助 15万円 37万円
税理士(又は税理士科目合格者) 18万円 50万円

 

僕が転職した2017年より給与水準はいいように思います。が、下限を見るとまだまだ低いですね…この業界に関わらず、熊本自体が低いのですが。

 

税理士事務所選びの最重要ポイント

税理士の仕事は将来AIに代替されるとよく言われます。

 

これは、2013年のオックスフォード大学の論文が基になっていると思いますが、よく分からない非税理士のコンサルタントの人が、AIやクラウド会計の知見もなく、安直にこの言葉を吹聴しているのには違和感を覚えています。私なりの見解はここでは割愛しますが、ひとつ言えることは、

 

「税理士の独占業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談)の価値は年々下がっている」

 

これは事実ですので、ここに必要以上に価値を感じている旧来型の税理士事務所には、僕だったら就職しないでしょう。

将来のAI時代に備え、事務所がどういう戦略をとっているか?ここは今最重要視しておくべきポイントではないでしょうか。若い方でこれから長くこの業界でやっていく方ならなおさらです。面接で聞いてみてもいいかもしれません。

 

TKCのネットワークについて

過去に東京でTKC会員の事務所に勤めたことがあるのですが、私が勤めた熊本のB社もTKC会員の事務所でした。

熊本でもTKCのネットワークの強さを感じました。

 

TKC会員の事務所に勤めると、TKCの理念、人、システムのネットワークを中心に会計人としての視野が出来上がります。それはそれで結構なことですが、他の事務所では見えている部分が見えなくなる傾向にあるように感じます(もちろん逆も然りです)。

 

TKCのネットワークしか見えていない方は、例外なく他会計ベンダーに対して排他的になっているような気がします。キリスト教でアガペー(隣人を愛せ)という言葉がありますが、このアガペーには「但し、異教徒は除く」という裏メッセージがあります。若い方にはもっと柔軟に、バランス良くTKCの外の世界も感じてほしいと強く思います。

 

僕は特定の会計ベンダーに固執、依存していないので、基本的にどこのベンダーも応援しています。弱小事務所ですし、どこのベンダーとも持ちつ持たれつやっていきたいというスタンスです。まぁ簡単にいうと八方美人なんですが、ひとつ言えることは、僕の持っているリソースで、クライアントにとって最適なものを提供したいという姿勢なのは確かだと思います。

 

freeeなどでERPを設計して経理業務全体の業務効率化を考えている方に、「うちはTKCしかやってない」と突っぱねたくはなかったので、僕はTKC会員事務所にいながら、こういったシステムもオプションとして積極的に導入していました。

 

TKC会員の先生からよく聞くセリフは「freeeは使いにくい」です。これは使いにくいのではなく、上手く使える能力がないと言わざるを得ません。クラウド会計はただ導入しただけではその効用を最大限に発揮できません。会計だけクラウド化しても仕方ないので、どうせやるなら様々なツールをクラウド化して上手に連携して経理業務を効率化するのがお勧めです。

 

現にTKC会員事務所でも、このようなオプションをメニューとして提示している事務所はあると思います。STREAMEDを使ってTKCの会計システムにインポートしてるとこも増えているようですね。TKCへの後ろめたさから、公言はしていないかもしれないですが、こういう取り組みをしている事務所は個人的にお勧めです。熊本でやっているところがあるのかは知りませんが…

 

TKCの申告システムについて

僕がTKCで凄くいいなと思うのは、申告システムです。多少動きは遅いのがストレスではありますが、申告書作成のフローの中で、自己チェック機能、アラーム機能が、僕の知ってる範疇では他のシステムより親切のように思います。

 

また、TKC経営指標(BAST)で様々な経営指標を参照できます。個人的には業種別審査辞典(下記参照)が見れるのがいいですね。全巻買ったら20万円以上かかると思いますが、これが標準でついています。僕は主に事業計画作成の際に重宝していました。

TKCの会計ソフトについて

申告ソフトは素晴らしいと思いますが、月次巡回監査の理念を基に設計された会計ソフトはいまいちです。

巡回監査とは

関与先を毎月及び期末決算時に巡回し、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導することである。

 

理念は素晴らしいですが、コロナ禍、変化の速い時代で、「スピード感が遅い」、「導入コストが多い」点で、この設計は「弱み」にはなっていると思っています。少なくても強みではないですね。

 

スピード感については、クラウド会計ベンダーに勝てません。ネットバンクの連携ひとつをとっても、読み込みからルール設定の方法など、他社ベンダーの設計に比べると大分スピード感が劣ります。

 

導入コストについては、金銭面と人(労力)のコスト問題です。金銭面については、税理士事務所が会計ソフト月額〇〇円という感じで、クライアントに売る仕組みになっていますが、大体は事務所側が上乗せしているので、他社ベンダーのソフトよりランニングコストが高額になってるケースが多いでしょう。

 

人の面については、この会計ソフトを自計化(クライアント側で会計ソフトの入力を行う)するための労力面でのコストです。TKCは基本自計化推奨です。経理の方が上手く対応できればいいですが、上手くいかない場合、税理士事務所の職員が結局手を動かすことになります。また、自計化してもらうまでのフローは基本的には職員が対面で指導することになります。

 

この自計化もfreeeやマネーフォワードクラウドなら対面しなくてもクラウドでスムーズに出来ます。TKCもリモートなどを駆使して出来るは出来るのでしょうが、URLを飛ばせないサーバーに直接データを見にいくタイプの設計なので、やはりここでもスピード感が大分劣ります。

 

TKCの理念に共感している先生方でも、ここの弱みを補うため、前述のSTREAMED(ストリームド)で会計データを作って、TKCの会計ソフトにインポートということをやっている事務所もあるようです。TKCの会計ソフトを箱のように使うイメージです。これはありですね。せっかくTKC事務所に勤めるなら、こういう柔軟な取り組みもちゃんと行っている事務所に勤めた方がいいように思います。

 

参考:僕(税理士)の経営コンサル総論

以前、当事務所の経営コンサル業務の取り組みを総論的に公開しました(一部有料)ので、良かったらご参考までに。


高木誠

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