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ブラックが多い会計事務所業界で就職する際の注意点について

ブラック企業を選ばない

会計事務所に就職する際の注意点を私の経験を踏まえてまとめてみました。

私の失敗談~初めての就職~

今まで3つの会計事務所、3人の税理士のもとで働きました。
初めてこの業界に就職する際、大きい事務所に行くか、小さい事務所に行くかぐらいしか考えておらず、一番最初に面接したとこでOKをもらったので、それで安易に就職を決めました。
どこに行っても大して変わらないだろうと思っていましたが、実際に中に入ってみると、残業代なし、職員がすぐ辞める(離職率が異様に高い)、毎日所長の罵声雑言が飛び交うなどの事務所でした。

 

離職率が高いので担当件数も多く、ろくな引き継ぎもありませんでした。入社したその月に法人の決算を見よう見まねで3件やらされた記憶があります。未経験で会計システムの使い方も分からず、2ヶ月目には上場会社の子会社を担当し国際税務をやらされていました。所内に複雑な国際税務が分かる人がおらず、所長は教えてくれないというか、分からないという態度。とにかく毎日が不安で不安で仕方なかったです。朝礼では所長の罵声が職員に浴びせられます。時間の無駄だと思い、半年ほどで辞めましたが、実はこういう事務所は少なくないようです。

 

私の友人の勤務先では、いまだに社会保険に加入してくれないところもあります。
この業界は繁忙期に極端に残業が増えてしまうので、劣悪な労働環境に陥りがちです。それに加えて残業代を払わなかったり、社会保険に入れないのは、事務所が適正な利ザヤがとれていないか、経営者がケチなのかのどちらかでしょうが、どのみち違法であり、経営側の問題です。

 

こういった事務所は辞める時も大変です。同僚同士の連帯が強いケースが多く、仲がよかったりします。共有の敵がいるからです。カール・シュミット(独:1888-1985)の言う「友敵理論」というやつです。同じ思いをしている同僚に迷惑かけてしまうんじゃないか?という罪悪感があります。気が弱く優しい人ほど辞めれません。辞表を出したら「お前が辞めたらどうなるんだ、無責任だろ!」みたいなことを言ってきます。辞めることがいかにも罪のような論調で気の弱さにつけこんできます。でも、そんなの関係ありません。あなたの大切な人生、一日でもそこにいるのは時間の無駄です。すぐにやめましょう。それよりもまず、そんなところに絶対就職しないことです。

 

面接でのポイント

「ひとり税理士の仕事術」で有名な井ノ上陽一先生が興味深いことを言っています。彼自身が独立する前に経験した税理士業界の負の側面をメモしたもので、彼が独立する時には、これを絶対しないと決めたことらしいです。

 

  • 従業員を大切にしない
  • お客様をバカにする
  • 勉強しない
  • 上からモノをいう
  • 平気で時間に遅れる
  • 人が辞めても気にしない
  • 従業員に怒鳴る
  • 取引業者に威張る
  • スタッフに仕事を任せて飲み会やゴルフに行く
  • 仕事を教えない

 

などなどです。

会計事務所に勤める際の注意点

 

離職率が高いところは年がら年中求人に載っているので、注意した方がいいでしょう(今は人材不足の業界なので一概には言えませんが…)
また、コミュニケーションに自信がある方は経営者のふるまい、顔つきをよく観察していれば、この人は危険だと違和感を見つけ出せるはずです。私自身、今まで務めた3人の税理士のうち、2人は面接時から違和感を覚えていました。2/3のブラック率です。結局就職してしまいましたが、人間の直感や危機察知能力というのはバカにできません。プラトンの人相学があるくらいです。人間の顔つきから得られる情報というのは言語より信頼できるんじゃないかと最近思っています。自信がある方は、自分の信念に基づき直感を信じてみてもいいでしょう。

 

また、面接の際には雇う側も雇われる側も対等です。とにかく色々と聞いてみて、職員の方とも実際に面接してみるべきでしょう。頼めばさせてくれるはずです。逆に職員と面談をさせないというなら、その時点でその事務所を選ばなければいいでしょう。「スタッフの方は何年くらい働いていますか?」、「残業はどのくらいで残業代は満額出ますか?」など、聞きたいことは遠慮せずどんどん聞きましょう。

ブラック経営者の共通項

私が思うブラック経営者に共通しているところは「不都合な事実に耐えられない知性の弱さ(または度量の弱さ)」です。
我々の生きる社会に不都合な事実(ノイズ)はつきものです。特に経営者は自分にとって不都合な事実に多く対応していかなければなりません。それが仕事でもあります。そういったものに耐えられずに怒鳴ったり、過度に不機嫌になったり、場合によっては泣いてしまう経営者がいますが、そういう度量の弱さが顕著に現れるなら、その経営者は職員、もっというと自分以外の人を大切にできないでしょう。
私はそういうノイズに弱い人をただのマザコンと呼んでいます。偏見かもしれませんが、親が子育ての時期、とにかく我が子をノイズにさらされないように、汚いものは見せないように育ててしまった場合、ノイズに異様に弱い大人になってしまう気がします。そう思うと少し可哀そうな人なのかもしれません。

 

もう一つ、税理士業界のブラック経営者には、少し厄介なところがあります。
元々税理士なので論理的思考が上手なところです。仕事柄口も達者で、論理的に追いつめようとします。
ただ、こういう人の頭のよさ(私は頭がいいと思いませんが)には特徴があります。知識がテキストベースなところです。たくさん本を読んだりインプットをして、テキストをペタペタと自分の頭に張り付けているだけで、知識が血や肉になっていません。キョンシーのお札がテキストになっているようなイメージです。功利主義者といってもいいでしょう。物事の基準が常に損得感情で、対人コミュニケーションに関してもそういう側面が現れます。仕事に役立つか否か、儲かるかどうか、合理的かどうか。私はいかにも受験勉強的だなぁと思います。職員に問題が生じると、その知識を使って制度やシステムを整備し手当てをしようとします。システムで手当てできると思っている時点で甘いです。新たに作ったシステムを守れなかったりすることでまだノイズが生じます。一番手当すべきはあなたのふるまいである、いうことに気が付きません。私はそんなテキストベースの知性を知性とは思いませんし、そういう人を信用していません。

ワークライフバランスについて

余談ですが、ワークライフバランスと唱える経営者は、実質「労働時間の削減」を唱えているように思います。逆に「労働時間の削減」以外を唱えるセンスのいい方を見たことがありません。
ちょっと待ってください。ワークライフバランス=「労働時間の削減」なんでしょうか?ライフはどこに行ってしまったんでしょうか。私はただの思考停止だと思っています。元々は西洋個人の発想ですが、今の使われ方はそれ以下です。

そもそも厚労省が横文字を使うときは大体怪しいですし、人件費を削りたい勢力の要請なのは言うまでもありません。中小企業がそれに乗っかる必要はあるのでしょうか。風潮に乗っかりワークライフバランスを経営者が推し進めても、具体的なケアをしなければ職員は「残業したくてしてるんじゃない」「仕事を減らせ」「会社のためにやっているのに」という心情になるのが当然です。横文字でごまかしても具体的な解決にはなりません。とはいえ、世の中の流れ的にも、数字的にも残業は減らしたい。じゃあどうしたらいいのか?どうしてもやりたいなら横文字の題目を唱えずとも「無駄な残業を減らす」、「効率化をする」ことを組織が示し、ケアをし、本気で取り組んでいくしかないでしょう。男はどうもケアよりジャスティス(正義)を重視しますが、この取り組みにはケアに長けた女性の視点が大事な気がしています。女性社員の協力や意見を取り入れるといいでしょう。題目だけ唱えて何もしないのは論外です。

 

もっというと私はワークライフバランスの風潮自体がくだらないと思っています。私が勤めていた先にも昔ワークライフバランス委員会というのがありましたが、私が役員になった後は即廃止しました。働きたい人は働いて、定時で帰りたい人は帰れる環境を作る(ただし無駄な残業はやめよう!)が一番理想だと思っています。

 

そのために必要なことは経営者、職員のコモンセンスを調整し、育てることです。大人数なら難しいですが、中小企業ならできると思っています。そもそも経済界の要請や日経新聞に書いてある風潮に、熊本の中小企業が合わせる必要は全くありません。中小企業は中小企業の働き方を模索していけばいいと思っています。

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高木誠